Sweet sweets
アスランの部屋のドアを開けると、丁度彼は、作り付けの端末で、誰かと話をしているところだった。
「わかった。このデータは送る。だからお前もそれをよこせ。・・・・・それくらい何とかならないのか？・・・・・・・・お前それ口ばっかりじゃないか」
この人が、こんなに声を荒げるのも珍しい。
「じゃあ、俺から言ってみるから。・・・・だから何が不満なんだ？いいかげんにしろ、こっちだって暇なわけじゃないんだぞ！？」
画面に映っているのは、怜悧な印象の銀髪の男。彼も、何やら大声で喚いている。指向性のスピーカーを使っているのに、後ろに立ったシンにまで、その声が聞こえてきて。
『うるさい！犯すぞ貴様ぁ！！』
シンは、思い切り固まった。
「軍の回線でそういうこと叫ぶな！だいたい俺は地球なんだ。そんな脅しが通じるか！」
しかもツッ込むとこそこですか！
『脅しだぁ？何故俺が貴様を脅さにゃならん。我侭放題に無理難題押し付ける奴には仕置きが必要だと言っているんだ！』
「だからお前の権限でダメなら、その上と勝手に交渉するって言ってるだろう。・・・ああ、シン、すまない。少し待って・・・・」
『誰がダメだ！わかった！すぐに送るから待っていろ！！』
「すぐじゃなくていい、すぐじゃなくて！ちゃんと許可取ってからでかまわないから！」
『当たり前だ！』
ぶつ、と切れた通信の、灰色の画面を眺めて、アスランは深く、しかしどこか嬉しげに、ため息をついた。
「あいつは・・・・」
しかしシンは、ため息どころではない。
「アスランさん、さっきの・・・」
「ああ。イザーク・・・ジュール隊の隊長だ。前に同じ隊でな。乗ってる機体のデータよこせって言ったら、権限がないそうだから。じゃあもっと上に頼むって言ったら、怒って。まあ、怒るだろうなとは思ったんだが」
「意地が悪いアスランさんなんて、初めて見ました」
「そうか？俺とあいつはずっとこうだぞ」
言ったアスランは、終始笑っていて。
「『俺とあいつ』・・・ですか？」
「シン？」
仔犬のように懐いてくる、可愛い年下の恋人の、なんだか凄く怒った目。
アスランは、思わず首を傾げた。
「なんか、すごい親しそうですね。・・・それに、その、『犯すぞ』って・・・・」
それって、同じ隊だからって言うようなことなのか！？
「ああ、あいつも本気で言ってるわけじゃない。今、地球に来られないことくらい、わかり切っているんだから」
「そういうことじゃなくってですね！あんたそいつとそういう・・・そういう関係だったのかって！」
ぜえはぁと、荒く息をつきながらがなる少年の顔をまじまじと見てから、アスランはどこか呆然と、声を上げた。
「・・・・え、お前・・・もしかして、妬いてるのか？」
「違っ・・・なんで俺が！」
言葉では思い切り否定しているのに、真っ赤な顔が、思い切りそうだと言っている。
アスランは、呆れてシンの頭を軽く叩いた。
「イザークとは、そういうんじゃないよ。一時期、してたのは確かだけど・・・」
「してたんですかっ！」
「若気の至りだ！仕方ないだろ、する時だって、どっちが先にイかせるか勝負みたいなもんだったし」
「してたんだ！やっぱりしてたんだ！！」
「してなかったら、初めてのお前にどうやっていろいろ教えてやれたんだ！」
「だって相手の話なんか、あんたしたことなかったじゃないですか！」
「だって昔の話だ、関係ないだろ」
「今すごく関係あるでしょう！」
ぎゃあぎゃあと怒鳴りあった後、突然、アスランが口を手で覆った。
泣いたってうやむやなんかにしないぞ！と、シンは心に決めたのだが、しかし覆われた口から洩れたのは、くつくつという笑い声。
「お・・・まえ、可愛い・・・・・」
「何ですかそれっ！」
激昂したシンが、アスランの襟首を掴んで側のベッドに叩きつける。
しかし、床でなくてベッドなところが、シンの甘いところだと思うと、アスランは更に可笑しくなって。
「笑うなよっ」
「ごめん・・・って、なんで俺が謝らないといけないんだ」
そう文句をつけながらも、アスランは笑ったままで。
圧し掛かったままのシンの首に、するりと腕をまわして。
引き寄せて。
ふうっと笑いを消した唇を、シンのそれへと寄せた。
しっとりと、重なるキス。
それから、ゆっくりと舌を絡め合って。
やさしくて、甘い。
甘い、キス。
「・・・こんなんで、ごまかされませんよ」
「ごまかしてない」
アスランは、シンの唇に光る唾液を舐め取った。
「イザークとは、こういうキスはしなかった。・・・お前だけだ」
甘い声、それからまた、甘いキス。
寄り添った体温さえ、甘く感じて。
「・・・なんで」
それでも無理やりぼやいた声は、なんだか甘えたみたいになてしまって。
「だから・・・イザークは恋人じゃない」
「恋人じゃないのに、するの？」
覗き込んだ翠の瞳。
ああ、少し困ってる。
「もう、しないよ」
「俺だけ？」
「ああ、お前だけだ」
すごく、気持ちのいい声と、言葉。
それを紡ぐ唇に、今度は、シンから触れて。
きゅうっと、アスランの腕に力がこもる。
甘えた力加減が嬉しくて、気持ちいい。
「ん・・・んっ」
喉から、甘く洩れる声も飲み込んで、シンはそっとアスランの制服の下に手を滑り込ませた。
アンダー越しに撫でるだけで、ふるりと震える感じやすい体。
胸の先端は、もう硬くしこっていて、布越しでもすぐわかる。
抵抗のない脚を、膝を使って割り開き、軽く乗って体重をかける。
この手順が馴染んでしまっているのは、いちいち抵抗されていた頃の名残だ。
「あっ、ん・・・・シン、待て、シャワー・・・・」
「やだ、すぐしたい」
離れた唇でも、ぐだぐだと言うことをやめない人。
それでも彼は、仕方ないな、という顔をして、大人しく服を脱がされてくれた。
「ジュール隊長相手でも、こんな大人しかったんですか？」
「比べても、意味ないぞ」
「だって・・・」
衣服を剥ぎ取られて、すっかりさらされた、しなやかで白い体。
それを見下ろしながら。
「やっぱり、悔しいです。こんなあんた見るの、俺だけじゃなくちゃ嫌だ」
そんな可愛いことを言うシンの、肩に、首に、キスをして。
もともと緩められていた軍服を、長い指で、はだけさせて。
割り開かれた脚を、少年の腰に絡めて。
いつもは、なかなか見せない艶っぽい仕草で、シンを誘って。
「こんな俺は、見せてない」
そう、少し恥ずかしげに言うアスラン。
先ほどの悔しさはどこへやら。
どうしよう、嬉しくってどうにかなりそうだ。
「ほんと？」
「本当だ」
答えてくれた唇に、また、キス。
うん、この人、嘘なんかつけない人だもの。
シンは、それに満足して、笑った。
「ん・・・あ・・・んっ・・・・」
するすると、気持ちいい肌の手触りを、シンは何度も手のひらで楽しんだ。
そうして、唇と、舌で。
脚の間の反応を、楽しむ。
「んっ、やっ・・・」
立ち上がって、震えはじめたものを裏から舐め上げると、ひくんと震えた脚が閉じようとして、シンの頭をきゅうっと挟む。
「アスランさん、ダメですよ」
そう言って、シンは柔らかな皮膚を楽しんでいた手を戻し、また、脚を開かせた。
顔を上げれば、恥ずかしさに染まった頬が、可愛い。
こんな顔、ジュール隊長も見たのかな。
そう思うと、ムカついて。
少し、イタズラしてやりたくなる。
「アスランさん、脚、持って」
「あ・・・し？」
「うん。こう」
自分の髪をくしゃくしゃにしていたアスランの手を引き離し、シンはその手のひらにキスをしてから、大きく押し開いていた膝の裏に、掛けさせた。
「・・・っ！」
自分で一番恥ずかしい場所を晒すその姿に、一瞬身を震わせたものの、アスランは自分でより強く脚を引き寄せて、瞳を甘く潤ませながら、ちいさく小首を傾げてみせる。
「こう・・・か？」
「うん。スッゴイ、ヤらしい格好・・・」
恥ずかしがりのアスランが、こんな姿を見せてくれるのは、初めてで。
興奮、する。
「お・・・前が・・・・」
「へへっ、俺が、こんなカッコさせてんですね」
ジュール隊長じゃ、なくて。
「俺だけ、ですね」
こくんと頷く、可愛い人。
その人が見せつけてくれている、ひくひくとうごめく蕾に、シンは、ちゅっと口付ける。
「んぁ・・っ、こら、シン・・・」
「ちゃんと持っててくださいよ。あんたに蹴られたら、俺の頭くらい割れちゃいますよ」
「何を、馬鹿な・・・・」
それでも、そう言われてしまえば、アスランは手を離せない。
汗ですべる脚を、持ち直すようにして、きゅう、と引いて。
まるで、シンに差し出すように、してくれて。
「や・・・ぁ・・・クんっ・・・」
丁寧にふちを舐めれば、きゅう、と窄んで拒む様子を見せるのに、中まで舐めてやろうと舌を尖らせると、そこはふわりと綻び、花開いて。
「ぁん・・・っ」
熱い粘膜が、シンの舌を迎え入れ、早くしてくれとばかりに、強く、弱く、締め付ける。
だから、シンはたっぷりと中まで舐めてやって。
ちゅくちゅくという淫靡な音と、アスランの喘ぎが部屋を支配して、ふたりの頭を、耳の奥からとろかせていく。
「んンっ・・・・」
アスランの腰がたまらなそうに跳ね、それを押さえつけた弾みで、シンの鼻先にアスランのものが触れた。
それはもう、とろとろとぬめる粘液をこぼしはじめている。
ずっと舐めている場所も、もう、柔らかく潤っていて、ちゅく、と舌を抜き取ると、シンは上から恋人を見下ろした。
自分で足を開きながら、ふるふる震えて喘いでいる人。
可愛い。
かわいい。
かわいくて、イヤラシイ。
シンだけの、愛しいひと。
「もう、いいですよ」
肌に食い込むほどに、きつく脚を掴んでいた指を外してやると、待ちかねたようにしがみ付いてくるしなやかな腕。
「シン・・・」
甘くてあまくて、とろけてしまいそうな声。
もっと、とろかせてあげたいって、思う。
「はい」
だから、そう答えて。
今度は、自分で。甘い熱を持った脚を、ひろげてやって。
待ち望んでいるそこに、シン自身を、飲ませて、やる。
「ああっ・・・ん、ぅン・・・・」
ずるずると、何の抵抗もなく受け入れてくれるから、一息に、奥まで。
ぴったりと、シンを包んでくれる、熱い肉。
キモチイイ。
「アスラン、さん・・・・」
名前を呼んで、汗に張り付いた藍の髪を払ってやった。
そうして見えた、甘くとろける翠の瞳。
かわいくて、きれい。
食べちゃいたい。
食べちゃ、おう。
シンはうきうきとして、ぐっと腰を引き抜き、甘く震える奥襞に、再び深く突き込んだ。
「あっ、ぁ・・・・」
甘い声が、高く上がって。
甘い瞳が、切なく閉じる。
ほら、食べちゃった。
でも、もっと。
甘いその身を掻き抱き、何度も何度も貪りながら。
そのたびに、とろけていく人を、シンは思う存分味わった。
甘くて、おいしい。
シンの、恋人。
「早いな、お前。・・・だから何でそっちの意味に取る・・・・」
ぼそぼそとしゃべる声。
シンの大好きな、恋人の声。
「ああ。こっちで恋人いるんだ。・・・はぁ？男だよ。そう」
ちょっと、待て。ダレとナニ話してんだ！？
シンは一気に目が覚めて、がばりと起き上がると、恋人の声のするほうへ向きなおった。
案の定、彼は机の端末を立ち上げていて。
「ああ、シン、もう少し寝ていて良いぞ」
「良くないですよ・・・っ！」
画面に映っていたのは、やはり、あの銀髪の男だった。
イザーク・ジュール。
アスランの、昔の、男。
「そうだ、聞いてくれよイザーク、こいつ、お前に妬い・・・・」
「なんでそゆこと言うんですかっ！？」
『素でのろけるな馬鹿者！』
え。
シンは、通信機からの声に、固まった。
今のって、のろけ？
思わずほやんとシアワセな顔になってしまった少年を、カメラ越しに見やり。
昔の男は、
『フン』
と、笑う。
そうして、ふっつりと通信を切ってしまった。
「なっ・・・何ですかアイツ！」
「だから、イザーク。こういう奴なんだ、気にするな」
「めちゃめちゃ気になりますよ！なんですかあれ、鼻で笑いやがった！」
「だから・・・、気にするなよ」
うるさい、とばかりに、アスランはシンの口を、自分の口でふさいでしまう。
「ん・・・・んっ」
そうして、たっぷりと甘いキス。
「あーっ、もう」
これでほだされる俺も俺だけど、と、シンは思いながら。
素肌に赤い軍服を羽織っただけの人の腕を掴み、ずるずるとベッドへ引きずっていく。
「シン？」
「もう一回、しましょう」
それで、もう一回、シンだけだと言って。
「・・・・いいよ」
そう応えたアスランの笑顔は。
とろけるように、甘かった。